ウーチーの薬剤師冒険記 第3弾:2019年高血圧ガイドラインの降圧目標とその適用方法

高血圧

はじめに

こんにちは!「ウーチーの薬剤師冒険記」第3弾では、2019年高血圧ガイドラインに基づく降圧目標とその考え方について、特に患者さんの年齢や合併症に応じた柔軟な対応をどう取るかに焦点を当てて解説します。さらに、脳血管障害や腎機能障害のある患者さんにはどのように適用すれば良いかもお話しします。薬剤師として正しい知識を持ち、患者さんにわかりやすく説明するための参考にしてください。

2019年高血圧ガイドラインの降圧目標

2019年の日本高血圧学会のガイドラインは、患者さんの年齢や合併症の有無に応じた降圧目標を明確に示しています。この設定は、多くの臨床試験結果を踏まえ、心血管リスクを減らし、健康寿命の延伸を目指しています。

降圧目標の概要

患者の区分診察室血圧目標家庭血圧目標
75歳未満130/80 mmHg未満125/75 mmHg未満
75歳以上(合併症なし)140/90 mmHg未満135/85 mmHg未満
75歳以上(合併症あり)130/80 mmHg未満(柔軟な管理)125/75 mmHg未満

このように、年齢や合併症の有無に応じて目標が異なり、特に高齢者や合併症のない患者さんには無理のない範囲での管理が認められています。一方、心血管リスクが高いとされる若年層や合併症のある患者さんには、収縮期血圧125mmHg未満を目指す厳密な管理が推奨されています。

降圧目標に関連するエビデンス

2019年のガイドラインは、臨床試験データに基づいたエビデンスを元に作成されています。以下は、特に関連性の高い研究の要約です。

SPRINT試験の概要とその意義

SPRINT試験は、収縮期血圧を120mmHg未満に厳密に管理することが、心血管イベントのリスクを低減する効果があることを示した研究です。この試験では、75歳以上の高齢者を含む対象に対して厳格な血圧管理を行った結果、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが低下することが確認されました。

しかし、一部では腎機能悪化や低血圧症状の報告もあったため、高齢者や腎機能が低下している患者さんには無理のない範囲での管理が推奨されています。この研究結果に基づき、ガイドラインでは、高齢者や腎機能低下のある患者さんには130mmHg前後までを目安とする柔軟な対応が必要とされています。

ACCORD試験の結果と糖尿病患者への適用

ACCORD試験は、糖尿病患者の血圧管理に関する研究で、収縮期血圧を120mmHg未満に管理することで心血管リスクが低減することが示されましたが、一方で低血圧や腎機能悪化のリスクも指摘されています。このため、糖尿病を持つ患者さんには、厳格な管理を行う一方で、無理なく降圧できる柔軟な対応が求められています。

降圧目標の考え方と適用範囲

降圧目標を設定する際には、ガイドラインを基に適切な範囲を提案することが重要です。以下に、年齢や合併症の有無に応じた目標範囲の考え方を示します。

75歳未満の患者さんの場合

心血管リスクを低減するために、75歳未満の若年者や中高年層には、家庭血圧125mmHg未満を維持することが推奨されています。「125mmHg未満を目指すことで、将来的な心血管リスクを抑えられます」といった説明を行うと良いでしょう。

75歳以上で合併症のない場合

高齢者には、降圧目標が緩やかに設定されており、診察室血圧140/90mmHg未満、家庭血圧では135/85mmHgまでを目標とします。薬剤師としては、「高齢者の方は無理をせず、140mmHg前後を目指すのが良いでしょう」と説明することで、安心して管理を継続できるようにサポートしましょう。

75歳以上で脳血管障害や腎機能障害がある場合

脳血管障害や慢性腎臓病を抱える患者さんには、より厳密な血圧管理が推奨されます。収縮期血圧125mmHg未満を目指すことで、再発リスクや進行を抑えることが期待されます。「脳血管障害や腎臓病のある方には、できるだけ125mmHg未満を維持することが大切です」と説明し、患者さんの自己管理意識を高めることが重要です。

医師との方針共有の重要性

薬剤師が降圧目標について患者さんに説明する際には、医師と方針を共有しておくことが非常に重要です。これにより、薬剤師のアドバイスが医師の意向と一致し、患者さんも安心して治療に取り組めます。

  • 一貫した指導方針の提供
    医師とあらかじめ方針を共有しておくと、薬剤師も同じ基準で説明でき、患者さんが混乱することなく治療に集中できるようになります。特に高齢者や合併症のある患者さんには、医療チームとして一貫した指導を行うことで信頼感が向上します。
  • 患者の安心感と治療継続性の向上
    医師と薬剤師が同じ方針で説明を行うことで、患者さんが医療チームのサポートを感じられるため、治療の継続性が向上します。薬剤師が「次の診察で先生に相談してみましょう」といった助言を行うと、患者さんの安心感が増し、無理のない通院が可能になります。
  • 薬剤師の業務範囲を明確にする
    医師と方針を共有することで、薬剤師の業務が診療を超えない範囲で患者さんをサポートすることができます。診療的な判断を避けつつも、あくまで医療チームの一員として患者さんを支える立場を強調することで、患者さんからの信頼も得やすくなります。

おすすめ書籍

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  • 「2019年高血圧ガイドライン ダイジェスト」
    高血圧ガイドラインの要点が簡潔に解説されており、日々の業務での説明や指導にも役立ちます。高血圧管理の基礎知識として、ぜひ薬剤師の方に活用していただきたい一冊です。
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まとめ

2019年の高血圧ガイドラインは、年齢や合併症の有無に応じた降圧目標を提示し、心血管疾患や腎機能障害、脳血管障害のある患者さんに対する適切な血圧管理の指針を示しています。薬剤師としてエビデンスを理解し、患者さんに無理のない範囲での降圧を提案することで、健康管理のサポートができます。また、医師と方針を共有し一貫した指導を行うことで、患者さんが安心して治療に取り組める環境を提供することが重要です。

薬剤師の皆さんが、ガイドラインに基づいたサポートを実践し、患者さんの健康管理に貢献できることを願っています!

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