こんにちは、ウーチーです!
いつも「ウーチーの薬剤師冒険記」を読んでくださりありがとうございます!
今回は、第25弾として、**「腎機能低下時に特に注意すべき頻出薬5選」**を解説していきます!
腎機能が低下すると、薬の排泄が遅れ、副作用のリスクが増加します。処方の際、「この患者さん、腎機能は大丈夫かな?」と考えることが重要です。
現場でよく遭遇する薬剤の中から、特に腎機能低下時に慎重な管理が求められる5つの薬を紹介し、実践的な対応ポイントをまとめます!
1. メトホルミン(商品名:メトグルコなど)
リスク:乳酸アシドーシス
メトホルミンは、eGFR 30mL/分/1.73㎡未満の患者では禁忌とされています。これは、腎機能が低下するとメトホルミンが排泄されにくくなり、乳酸アシドーシスのリスクが上昇するためです。
日本糖尿病学会の推奨では、以下のような基準が示されています。
eGFR(mL/分/1.73㎡) | 推奨用量 |
---|---|
≥60(正常) | 最大2250mg/日(通常量) |
45-59(軽度低下) | 最大1500mg/日 |
30-44(中等度低下) | 最大750mg/日、慎重投与 |
<30(重度低下) | 禁忌(投与不可) |
実際の症例
✔ 70代男性(糖尿病、eGFR 28)
メトホルミン1000mg/日を服用中、風邪による脱水が重なり、倦怠感・呼吸困難を訴えて救急搬送。血液ガス分析で乳酸アシドーシスを確認し、血液透析を実施。
→ 脱水+腎機能低下でメトホルミンが蓄積し、乳酸アシドーシスを発症。
対策
- 腎機能が30未満なら即中止!
- eGFR 30~44は少量で慎重投与
- 脱水・感染・心不全がある患者には特に注意
- 定期的な腎機能チェック
2. 直接経口抗凝固薬(DOAC)
リスク:出血リスク上昇
DOACの一部(ダビガトラン(プラザキサ)など)は腎排泄型で、腎機能が低下すると血中濃度が上昇し、出血リスクが増加します。
特に、eGFR 30mL/分/1.73㎡未満では投与禁忌の薬があるため、慎重な管理が必要です。
ブルーレター情報(プラザキサ)
✔ 腎機能低下患者において重大な出血報告が相次ぎ、2011年に安全性速報(ブルーレター)が発行。
✔ eGFR 30未満では使用禁止!
対策
- 腎機能低下患者のDOACは慎重に!
- 出血傾向(鼻血、歯茎出血、血尿)をチェック
- 腎機能モニタリングを定期的に実施
3. バラシクロビル(商品名:バルトレックス)
リスク:アシクロビル脳症・急性腎不全
バラシクロビルは腎排泄型の抗ウイルス薬で、腎機能が低下すると血中濃度が上昇し、**中枢神経系の副作用(アシクロビル脳症:意識障害・せん妄・錯乱・痙攣)**を引き起こすことがあります。
実際の症例
✔ 80歳女性(eGFR 25) 帯状疱疹の治療でバラシクロビル1000mgを1日3回処方。投与開始3日後、せん妄・幻覚が出現し、急性腎不全を発症。緊急透析後、症状改善。
→ 腎機能低下+高用量投与により、アシクロビル脳症を発症。
対策
- 腎機能に応じて減量(eGFR 30未満なら慎重投与)
- 意識障害の兆候(混乱、せん妄、幻覚)をチェック
- 十分な水分補給を指導
4. デュロキセチン(商品名:サインバルタ)
リスク:腎機能低下時の血中濃度上昇
デュロキセチン(サインバルタ)は主に肝代謝ですが、腎機能低下時には排泄遅延により血中濃度が上昇し、副作用(ふらつき、眠気)が増強する可能性があります。
eGFR 30未満では禁忌とされており、投与は避けるべきです。
対策
- eGFR 30未満では投与不可
- 腎機能が低下している場合は他剤を検討
- 患者の状態を確認し、慎重な対応を
5. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
リスク:腎機能悪化
NSAIDsは腎血流を低下させ、腎機能を削ってしまうリスクがあります。特に、高齢者や腎機能が低下している患者では、長期間のNSAIDs使用により慢性腎不全が悪化することがあるため要注意。
腎機能が低下すると、NSAIDsによる腎血流低下がさらに影響を与え、急性腎障害(AKI)を引き起こすリスクが高まります。また、高カリウム血症を誘発する可能性もあるため、モニタリングが重要です。
対策
- 腎機能低下患者にはNSAIDsをできるだけ避ける
- 代替薬としてアセトアミノフェン(カロナール)を検討
- 水分摂取不足や脱水にも注意
参考書籍
腎機能低下時の薬物療法をさらに深く学びたい方は、以下の書籍もおすすめです。腎臓病薬物療法に関する専門書を活用し、より実践的な知識を身につけましょう。
1. 『この局面にこの一手!Dr.長澤直伝!腎臓病薬物療法の定跡』
著者:長澤 将
内容: 腎臓病患者の薬物療法において、「この状況ではどの薬をどう調整すればいいのか?」という疑問に対し、実践的な戦略を示した書籍。腎機能別の投薬調整の具体例が豊富で、薬剤師や医師が臨床の現場ですぐに活用できる情報が満載。
2. 『薬剤師力がぐんぐん伸びる 専門医がやさしく教える慢性腎臓病フォローアップの勘所』
著者:長澤 将
内容: 慢性腎臓病(CKD)のフォローアップに関する知識を、薬剤師向けに分かりやすく解説。
腎機能低下時の薬物療法のポイントだけでなく、食事指導や生活管理についても詳しく学べる一冊。
3. 『レシピプラス 腎臓が教える腎機能のみかた 2020年秋』
出版社:南山堂
内容: 腎機能の評価方法や、腎機能に応じた薬剤選択をテーマにした特集号。腎機能低下時の処方設計に必要な基本的な考え方を、具体的な症例を交えて解説。

4. 『レシピプラス 徹底サポート 腎機能低下時のくらしとくすり 2021年秋』
出版社:南山堂
内容: 腎機能低下患者における服薬指導や生活指導のポイントを詳しく解説。薬剤師が患者に適切なアドバイスを提供するための具体的な知識が得られる。
5. 『薬局で使える実践薬学』
著者:山本 雄一郎
内容: 薬局での実践的な薬学管理に関する知識を網羅した書籍。腎機能低下時の処方調整や、服薬指導の際に活用できる実践的な内容が充実。
まとめ
腎機能低下時に注意すべき薬として、メトホルミン、DOAC、バラシクロビル、デュロキセチン(サインバルタ)、NSAIDsを紹介しました。
特に、腎機能が低下している患者では薬剤の排泄が遅延し、副作用のリスクが大幅に増加するため、適切な用量調整や慎重な管理が必要です。
日々の服薬指導において、腎機能の評価を忘れず、適切な薬剤選択を心がけましょう!
次回の「ウーチーの薬剤師冒険記」もお楽しみに!
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