みなさん、こんにちは!ウーチーです。
前回の【第25弾】では、腎機能低下時に特に注意が必要な頻出薬剤5つについてお話ししました。今回は、それ以外の薬剤について詳しく解説していきます。
腎機能が低下すると、本来排泄されるはずの薬剤が体内に蓄積し、副作用のリスクが高まります。そのため、適切な投与量の調整や代替薬の検討が重要です。この記事では、特に注意が必要な薬剤をピックアップし、リスクや代替薬の選択肢について解説していきます。
H2ブロッカー(ファモチジン)
腎機能低下時のリスク
ファモチジン(ガスター)はH2受容体拮抗薬であり、主に腎臓から排泄されます。そのため、腎機能が低下すると血中濃度が上昇し、副作用のリスクが増加します。
特に、高齢者やeGFRが低下している患者では、**認知機能低下、せん妄、血球減少(白血球減少など)**が報告されています。
対策・代替薬
eGFRが低下している患者では、投与量の調整が必要です。腎機能低下時でも使用しやすい代替薬として、**ラフチジン(プロテカジン)**が選択肢になります。
メトトレキサート(MTX)
腎機能低下時のリスク
メトトレキサート(MTX)は、腎毒性と骨髄抑制のリスクがある薬剤です。
MTXは腎排泄型であり、腎機能が低下すると排泄が遅れ、血中濃度が上昇します。その結果、白血球減少、貧血、血小板減少といった骨髄抑制が強く出る可能性があります。さらに、腎障害を引き起こすこともあり、注意が必要です。
対策
添付文書では、クレアチニンクリアランス(CCr)30 mL/分未満の患者は禁忌とされています。eGFRが30未満の場合は使用を避け、慎重に対応することが重要です。
スルホニルウレア(SU)剤
腎機能低下時のリスク
SU剤(アマリール、オイグルコンなど)は、血糖降下作用を持つ糖尿病治療薬ですが、腎機能低下時には低血糖のリスクが高まります。腎排泄が遅れることで、低血糖が長時間持続する可能性があり、特にeGFR 30未満の患者では危険です。
対策・代替薬
SU剤の使用が難しい腎機能低下患者には、**DPP-4阻害薬のうち、トラゼンタ(リナグリプチン)やテネリア(テネリグリプチン)**が適しています。これらの薬剤は、腎排泄に依存せず、腎機能低下時でも用量調整が不要です。
プレガバリン(リリカ)・ミロガバリン(タリージェ)
腎機能低下時のリスク
プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)は、神経障害性疼痛の治療に用いられる薬剤です。しかし、腎機能が低下すると体内に蓄積し、副作用が増加することが知られています。
特に、めまいやふらつき、転倒のリスクが高まるため、高齢者や腎機能低下患者では注意が必要です。
対策
eGFRに応じて、投与量の調整が必要です。添付文書でも、腎機能に応じた減量が推奨されています。特に、高齢者では転倒リスクを考慮し、慎重な投与が求められます。
酸化マグネシウム
腎機能低下時のリスク
酸化マグネシウムは便秘治療に広く使われる薬剤ですが、腎機能低下時には高マグネシウム血症のリスクがあります。
eGFRが45 mL/分未満の患者では、マグネシウムの排泄が低下し、血中濃度が上昇する可能性があるため注意が必要です。特に、脈拍低下、筋力低下、吐き気、嘔吐といった症状が現れやすく、腎機能低下患者ではこれらの症状が見られた際に、高マグネシウム血症を疑うことが重要です。
対策・代替薬
腎機能が低下している患者には、リンゼスやグーフィスなどの便秘治療薬が代替薬として検討されます。これらの薬剤は腎機能の影響を受けにくく、安全に使用できます。
アロプリノール
腎機能低下時のリスク
アロプリノールは尿酸生成抑制薬であり、腎機能低下時には活性代謝物(オキシプリノール)が蓄積しやすくなります。その結果、**アロプリノール誘発性過敏症症候群(AHS)**などの重篤な副作用のリスクが高まります。
対策
eGFRが低下した患者では、投与量の減量や投与間隔の延長が推奨されます。特に、高齢者や腎機能低下患者では、過敏症のリスクを考慮し、慎重な投与が求められます。
まとめ
✅ ファモチジン(ガスター) → 代替薬はプロテカジン(ラフチジン)
✅ メトトレキサート(MTX) → 腎毒性&骨髄抑制あり、eGFR30未満で禁忌
✅ SU剤(アマリールなど) → 低血糖リスク増、DPP-4(トラゼンタ・テネリア)へ変更推奨
✅ リリカ・タリージェ → めまい・ふらつき、eGFRに応じて減量が必要
✅ 酸化マグネシウム → 高マグネシウム血症のリスクあり。脈拍低下、筋力低下、吐き気、嘔吐が重要な症状(代替薬:リンゼス・グーフィス)
✅ アロプリノール → 代謝物が蓄積、過敏症リスク増。減量・投与間隔の調整が必要
腎機能低下患者への投薬は慎重な判断が必要です。次回の第27弾では、さらに注意すべき薬剤について掘り下げていきます!
それでは、次回もお楽しみに!
参考書籍
腎機能低下時の薬物療法をさらに深く学びたい方は、以下の書籍もおすすめです。腎臓病薬物療法に関する専門書を活用し、より実践的な知識を身につけましょう。
1. 『この局面にこの一手!Dr.長澤直伝!腎臓病薬物療法の定跡』
著者:長澤 将
内容: 腎臓病患者の薬物療法において、「この状況ではどの薬をどう調整すればいいのか?」という疑問に対し、実践的な戦略を示した書籍。腎機能別の投薬調整の具体例が豊富で、薬剤師や医師が臨床の現場ですぐに活用できる情報が満載。
2. 『薬剤師力がぐんぐん伸びる 専門医がやさしく教える慢性腎臓病フォローアップの勘所』
著者:長澤 将
内容: 慢性腎臓病(CKD)のフォローアップに関する知識を、薬剤師向けに分かりやすく解説。
腎機能低下時の薬物療法のポイントだけでなく、食事指導や生活管理についても詳しく学べる一冊。
3. 『レシピプラス 腎臓が教える腎機能のみかた 2020年秋』
出版社:南山堂
内容: 腎機能の評価方法や、腎機能に応じた薬剤選択をテーマにした特集号。腎機能低下時の処方設計に必要な基本的な考え方を、具体的な症例を交えて解説。

4. 『レシピプラス 徹底サポート 腎機能低下時のくらしとくすり 2021年秋』
出版社:南山堂
内容: 腎機能低下患者における服薬指導や生活指導のポイントを詳しく解説。薬剤師が患者に適切なアドバイスを提供するための具体的な知識が得られる。
5. 『薬局で使える実践薬学』
著者:山本 雄一郎
内容: 薬局での実践的な薬学管理に関する知識を網羅した書籍。腎機能低下時の処方調整や、服薬指導の際に活用できる実践的な内容が充実。
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