【ウーチーの薬剤師冒険記】第26弾「腎機能低下時に注意が必要な薬剤【その1】」

腎機能

みなさん、こんにちは!ウーチーです。

前回の【第25弾】では、腎機能低下時に特に注意が必要な頻出薬剤5つについてお話ししました。今回は、それ以外の薬剤について詳しく解説していきます。

腎機能が低下すると、本来排泄されるはずの薬剤が体内に蓄積し、副作用のリスクが高まります。そのため、適切な投与量の調整や代替薬の検討が重要です。この記事では、特に注意が必要な薬剤をピックアップし、リスクや代替薬の選択肢について解説していきます。


H2ブロッカー(ファモチジン)

腎機能低下時のリスク
ファモチジン(ガスター)はH2受容体拮抗薬であり、主に腎臓から排泄されます。そのため、腎機能が低下すると血中濃度が上昇し、副作用のリスクが増加します。

特に、高齢者やeGFRが低下している患者では、**認知機能低下、せん妄、血球減少(白血球減少など)**が報告されています。

対策・代替薬
eGFRが低下している患者では、投与量の調整が必要です。腎機能低下時でも使用しやすい代替薬として、**ラフチジン(プロテカジン)**が選択肢になります。


メトトレキサート(MTX)

腎機能低下時のリスク
メトトレキサート(MTX)は、腎毒性骨髄抑制のリスクがある薬剤です。

MTXは腎排泄型であり、腎機能が低下すると排泄が遅れ、血中濃度が上昇します。その結果、白血球減少、貧血、血小板減少といった骨髄抑制が強く出る可能性があります。さらに、腎障害を引き起こすこともあり、注意が必要です。

対策
添付文書では、クレアチニンクリアランス(CCr)30 mL/分未満の患者は禁忌とされています。eGFRが30未満の場合は使用を避け、慎重に対応することが重要です。


スルホニルウレア(SU)剤

腎機能低下時のリスク
SU剤(アマリール、オイグルコンなど)は、血糖降下作用を持つ糖尿病治療薬ですが、腎機能低下時には低血糖のリスクが高まります。腎排泄が遅れることで、低血糖が長時間持続する可能性があり、特にeGFR 30未満の患者では危険です。

対策・代替薬
SU剤の使用が難しい腎機能低下患者には、**DPP-4阻害薬のうち、トラゼンタ(リナグリプチン)やテネリア(テネリグリプチン)**が適しています。これらの薬剤は、腎排泄に依存せず、腎機能低下時でも用量調整が不要です。


プレガバリン(リリカ)・ミロガバリン(タリージェ)

腎機能低下時のリスク
プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)は、神経障害性疼痛の治療に用いられる薬剤です。しかし、腎機能が低下すると体内に蓄積し、副作用が増加することが知られています。

特に、めまいやふらつき、転倒のリスクが高まるため、高齢者や腎機能低下患者では注意が必要です。

対策
eGFRに応じて、投与量の調整が必要です。添付文書でも、腎機能に応じた減量が推奨されています。特に、高齢者では転倒リスクを考慮し、慎重な投与が求められます。


酸化マグネシウム

腎機能低下時のリスク
酸化マグネシウムは便秘治療に広く使われる薬剤ですが、腎機能低下時には高マグネシウム血症のリスクがあります。

eGFRが45 mL/分未満の患者では、マグネシウムの排泄が低下し、血中濃度が上昇する可能性があるため注意が必要です。特に、脈拍低下、筋力低下、吐き気、嘔吐といった症状が現れやすく、腎機能低下患者ではこれらの症状が見られた際に、高マグネシウム血症を疑うことが重要です。

対策・代替薬
腎機能が低下している患者には、リンゼスやグーフィスなどの便秘治療薬が代替薬として検討されます。これらの薬剤は腎機能の影響を受けにくく、安全に使用できます。


アロプリノール

腎機能低下時のリスク
アロプリノールは尿酸生成抑制薬であり、腎機能低下時には活性代謝物(オキシプリノール)が蓄積しやすくなります。その結果、**アロプリノール誘発性過敏症症候群(AHS)**などの重篤な副作用のリスクが高まります。

対策
eGFRが低下した患者では、投与量の減量や投与間隔の延長が推奨されます。特に、高齢者や腎機能低下患者では、過敏症のリスクを考慮し、慎重な投与が求められます。


まとめ

ファモチジン(ガスター)代替薬はプロテカジン(ラフチジン)
メトトレキサート(MTX)腎毒性&骨髄抑制あり、eGFR30未満で禁忌
SU剤(アマリールなど)低血糖リスク増、DPP-4(トラゼンタ・テネリア)へ変更推奨
リリカ・タリージェめまい・ふらつき、eGFRに応じて減量が必要
酸化マグネシウム高マグネシウム血症のリスクあり。脈拍低下、筋力低下、吐き気、嘔吐が重要な症状(代替薬:リンゼス・グーフィス
アロプリノール代謝物が蓄積、過敏症リスク増。減量・投与間隔の調整が必要

腎機能低下患者への投薬は慎重な判断が必要です。次回の第27弾では、さらに注意すべき薬剤について掘り下げていきます!

それでは、次回もお楽しみに!

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