MRAとは?腎機能に与える影響
MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)は、腎臓を保護し、タンパク尿を減らす可能性がある薬剤です。現在使用されているMRAには、以下の4種類があります。
- アルダクトンA(スピロノラクトン)
- セララ(エプレレノン)
- ミネブロ(エサキセレノン)
- ケレンディア(フィネレノン)
それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。
各MRAの特徴と腎機能への影響
ミネブロ(エサキセレノン)
- ESAX-DN試験により、微量アルブミン尿を減らす効果が確認されている。
- ただし、GFR30mL/min/1.73m²未満では禁忌。
セララ(エプレレノン)
- CCR50mL/min未満では禁忌。
- 腎機能が低下した患者には使用が難しい。
ケレンディア(フィネレノン)
- FIDELIO-DKD試験により、腎複合エンドポイント(末期腎不全への移行、eGFR40%以上の持続的低下、腎臓死発症)を18%有意に減少させることが示された。
- 糖尿病性腎症(DKD)に対して有望だが、適応が限定されている。
アルダクトンA(スピロノラクトン)
- GFR30mL/min/1.73m²未満の患者でも使用可能。
- 女性化乳房や高カリウム血症のリスクが高いため慎重に使用する必要がある。
MRAの有力な使い方(選び方)
💡 基本的な選択基準としては以下のように考えるとよい。
✅ 使えるなら「ケレンディア」がベスト
- 腎機能保護のエビデンスが最も確立されている。
- FIDELIO-DKD試験により、腎機能低下リスクを18%抑制することが証明された。
- ただし、適応が「糖尿病性腎症(DKD)」に限られており、それ以外では使えない点が最大のデメリット。
✅ 次に「ミネブロ」が有力な選択肢
- ケレンディアと同じMRAの仲間で、作用機序が似ている。
- 「高血圧」の適応があり、幅広い患者に使用しやすい。
- ただし、eGFR30未満では禁忌。
✅ eGFR30未満なら「アルダクトンA」
- MRAの中で唯一、eGFR30未満の患者にも使用可能。
- ただし、女性化乳房のリスクがあるため、長期使用には注意が必要。
- 高カリウム血症のリスクもあり、血中カリウム値のモニタリングが必須。
❌ 腎機能が低下している患者には「セララ」が最も使いづらい
- eGFR50未満では禁忌のため、腎機能が低下した患者には使用できない。
MRA使用時の注意点
MRAの最も大きな副作用は高カリウム血症です。
⚠ 高カリウム血症対策として、カリウム吸着薬を併用するのが有効。
例:**ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム)**は、高カリウム血症のリスクを軽減できます。
MRAの推奨度(DKD患者への使用)
「CKD診療ガイドライン2023」によると、MRAはDKD患者の尿アルブミン改善を示す可能性があるため、使用が提案されている(エビデンスレベル2C)。
ただし、腎機能保護の目的で使用するには、以下の点に注意が必要です。
- 尿アルブミンの減少は認められるが、長期的な腎機能低下をアウトカムとしたRCTは2つのみ。
- バイアスリスクや非直接性に中程度の懸念があるため、エビデンスの強さはC(弱い推奨)。
MRAとタンパク尿管理(血圧コントロールの重要性)
🔹 家庭血圧125mmHg未満を目標にするのが望ましい。
🔹 110mmHg未満では腎機能悪化のリスクがあるため注意。
🔹 130mmHg未満を維持するのが一般的な推奨。
まとめ:MRAの適切な選び方
✅ 腎機能保護のエビデンスがあるのは「ケレンディア」だが、糖尿病性腎症(DKD)のみ適応。
✅ ミネブロは「高血圧」の適応があり、実際の臨床では使いやすい。
✅ eGFR30未満の患者には「アルダクトンA」が使用可能だが、副作用に注意。
✅ セララはeGFR50未満では禁忌のため、最も使いづらい。
✅ 高カリウム血症対策として、ロケルマなどのカリウム吸着薬を併用するのも一つの手段。
✅ 家庭血圧125mmHg未満を目標としつつ、110〜130mmHgの範囲でコントロールするのが最適。
MRAの適切な選択を行い、腎機能を守る治療戦略を考えていきましょう!
参考書籍
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4. エビデンスに基づく CKD診療ガイドライン2023
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