挨拶文
こんにちは、ウーチーです!「薬剤師冒険記」第30弾をご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、腎機能低下時の食事療法について解説します。薬剤師として、患者さんから「腎臓の機能が落ちてきたときに、どんな食事をすれば良いですか?」と聞かれることがよくあります。
食事療法は確かに重要ですが、その効果はどの程度あるのでしょうか?また、どのような点に気をつければ良いのか?今回は、科学的根拠に基づいた考え方と実践方法を詳しくお伝えします!
腎機能低下時の食事療法の有効性
食事療法の効果については、エビデンスが限られています。
例えば、糖尿病性腎症において低タンパク食の有効性を示す明確なデータは少ないのが現状です。しかし、栄養状態が良好で、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)を含む降圧薬を服用し、血圧目標を達成しているIgA腎症の患者では、4年以上タンパク質の摂取制限を続けた場合、年間0.53mL/分のeGFR低下を抑えられることが示されています。(『薬剤師力がぐんぐん伸びる 専門医が優しく教える 慢性腎臓病フォローアップの勘所』より)
つまり、栄養状態が良く、血圧管理が適切に行われている患者では、タンパク質制限が有効である可能性が高いと言えます。ただし、適切に実践するのは難しく、無理に行うと栄養不足につながるリスクがあるため、慎重に進める必要があります。
タンパク質制限の実践方法
1. タンパク質摂取の管理
- 1食につき、肉・魚・卵・大豆製品のうち1種類を選ぶ(一度の食事で複数のタンパク源を摂らない)
- 治療用特殊食品を活用し、タンパク質を抑えつつ栄養を確保する
2. エネルギー不足を防ぐ方法
タンパク質を制限すると、エネルギー不足になりやすくなります。そのため、以下のような工夫が重要です。
- 油脂類の積極的な活用(オリーブ油・ごま油・バター・ドレッシングなど)
- 糖質の適度な摂取(砂糖・春雨・くずきりなど)
具体的なエネルギー補充例:
✔ トーストにはバターやジャムを多めに塗る
✔ サラダにオリーブ油をかける
✔ 昼食の魚料理をフライにする
✔ 夕食の鍋に春雨を加える
これらの方法は、『薬剤師・管理栄養士のための 今日からはじめる薬局栄養指導』(日経メディカル開発 編)にも詳しく記載されています。
エネルギーを確保するための食品選択
エネルギーを効率よく摂取するために、以下の食品選択と調理方法を意識しましょう。
- 脂肪分の多い部位を選ぶ
- 鶏肉の場合:ささみ(98kcal/100g) < もも肉(皮付き:190kcal/100g)
- 牛肉の場合:ヒレ肉 < 肩ロース(脂質が多くエネルギー高)
- 魚のエネルギー量
- たら(77kcal/100g) < ぶり(257kcal/100g)
- まぐろ赤身(125kcal/100g) < まぐろトロ(344kcal/100g)
- 調理方法の工夫
- フライや天ぷらで油を活用する
- ドレッシングやマヨネーズを適度に利用する
治療用特殊食品の活用
腎機能低下時には、タンパク質を制限しながらも栄養を確保するために、治療用特殊食品を活用するのが有効です。
おすすめの特殊食品
- ゆめごはんトレー 1/35:タンパク質を1/35に抑えたパックご飯で、手軽に導入しやすい。
- 真粒米(しんりゅうまい):タンパク質を1/25に抑えた研ぐタイプの低タンパク米で、通常の炊飯が可能。
薬剤師としてのサポートポイント
- 塩分制限の指導
- 高血圧や浮腫のリスクを軽減するため、塩分摂取を抑えるよう助言。
- ハーブやスパイス、酢を活用する減塩方法を提案。
- カリウム制限の指導
- 青汁、トマトジュース、野菜ジュースの摂取を控えるよう指導。
- 果物や野菜については、適度な摂取なら問題ないことを説明。
- エネルギー不足を防ぐ指導
- 油脂類や糖質の活用を提案し、日常の食事に取り入れやすくする。
- 治療用特殊食品の活用サポート
- 低タンパク食品の導入をサポートし、患者の食生活に合わせた提案を行う。
まとめ
腎機能低下時の食事療法は、一定の効果があるものの、エビデンスは限定的です。そのため、適切な血圧管理や薬物療法と組み合わせながら、無理なく実践することが大切です。
薬剤師として、患者の状況に合わせた適切なアドバイスを行い、治療用特殊食品の活用やエネルギー摂取の工夫を提案することが求められます。
参考書籍・特殊食品
📚 参考書籍
- 『薬剤師力がぐんぐん伸びる 専門医が優しく教える 慢性腎臓病フォローアップの勘所』
腎臓病患者の食事管理や薬物療法について詳しく解説。低タンパク食のエビデンスや、腎機能維持のための考え方が学べる。
- 『薬剤師・管理栄養士のための 今日からはじめる薬局栄養指導』
薬局での栄養指導に特化した実践的な内容。患者へのアドバイス方法や食事療法の具体的な指導例を紹介。
🍚 治療用特殊食品
- ゆめごはんトレー 1/35(低タンパクご飯)
- 真粒米(しんりゅうまい)(低タンパク米)
今回の内容が、日々の患者対応の参考になれば幸いです!では、また次回の「ウーチーの薬剤師冒険記」でお会いしましょう!
コメント