腎機能を守るために、薬剤師ができることは何か?
このテーマを掘り下げ、薬剤師としての実践的な介入ポイントを明確にしていきます。
1. 腎機能を守る第一歩は「現状把握」
まず最も重要なのは、患者の腎機能の現状を常に把握することです。
具体的には、血液検査データからeGFR(推算糸球体濾過量)を確認することが基本になります。
● クレアチニンとeGFR
- 多くの病院の検査結果にはeGFRが記載されています。
- 記載がない場合でも、クレアチニン値からeGFRを算出できます。
- 数年のうちにeGFRが5〜10程度低下する場合、腎機能の悪化が急速に進行している可能性があります。
● eGFRの低下スピードを把握する重要性
eGFRが低下している場合、「どの段階で気づくか」によって治療介入の効果が変わります。
- 例えば、eGFR 50の段階で気づき、適切な介入を行うことで、進行スピードを抑えることができます。
- しかし、eGFR 30の段階で気づいた場合、すでに腎機能は大きく低下しており、透析への移行リスクが高まります。
2. 腎機能低下の重要な指標「タンパク尿」
腎臓の機能低下を予測する上で、タンパク尿の有無とその量を把握することが重要です。
● タンパク尿の検査方法
- 定性試験(試験紙を用いた簡易検査)
- 結果の表記:±, +, ++, +++ など
- ざっくりとした判定は可能だが、正確な量は分からない
- 定量試験(アルブミン定量などの検査)
- 正確なタンパク尿量が分かる
- タンパク尿が少量でも腎機能低下のリスクを判断できる
● タンパク尿が意味するもの
- タンパク尿があるということは、腎臓のろ過機能が障害を受けていることを意味します。
- タンパク尿の増加 = 腎機能の低下スピードが加速する可能性が高い。
- そのため、タンパク尿が持続している場合は、適切な介入が必要になります。
3. 薬剤師ができる「腎機能を守る3つのポイント」
腎機能を守るために、薬剤師ができることは主に3つあります。
① SGLT2阻害薬の活用
SGLT2阻害薬(フォシーガ、ジャディアンスなど)は、腎保護作用を持つ重要な薬剤です。
- 糖尿病が原疾患の場合、タンパク尿の有無に関わらず腎保護効果があることが明確。
- それ以外の疾患の場合、タンパク尿がある場合に腎保護効果が期待できるが、タンパク尿がない場合の効果は不明。
② MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の活用
- ケレンディア(フィネレノン)は、慢性腎臓病(CKD)患者における腎機能保護作用が確認されています。
- ただし、従来のMRA(アルダクトン、ミネブロ)との比較データはまだ少ないため、今後のエビデンスの蓄積が必要。
- MRAはタンパク尿を減らす効果があるため、SGLT2阻害薬と併用するケースも増えている。
③ 血圧管理の最適化
- 腎機能低下の進行を防ぐためには、適切な血圧コントロールが不可欠。
- タンパク尿がある場合、降圧目標は130/80mmHg未満が推奨されることが多い。
- SGLT2阻害薬やMRAを組み合わせることで、腎保護作用とともに血圧低下効果も期待できる。
4. 薬剤師が果たすべき役割
腎機能を守るために、薬剤師がドクターや患者とどのように連携するかが重要です。
● ① 定期的な腎機能モニタリングの提案
- eGFRの推移を把握し、低下スピードを確認する。
- 数年でeGFRが5〜10低下する場合、腎専門医への紹介を検討する基準となる。
● ② タンパク尿の検査を促す
- 定性試験だけでなく、定量試験を受けることを推奨する。
- タンパク尿の変動が大きい場合、早めに治療介入を行う。
● ③ 適切な薬剤選択の提案
- SGLT2阻害薬やMRAの導入の可能性を医師に提案する。
- 血圧コントロールが不十分な場合は、降圧薬の見直しを提案する。
● ④ 情報提供と患者教育
- 腎機能低下を抑えるための生活指導(減塩・適切な水分摂取など)を行う。
- 「腎機能が低下するとどうなるか?」を患者に分かりやすく説明し、早めの対応につなげる。
5. まとめ
✅ 腎機能を守るために、薬剤師ができることは 「現状の把握」→「適切な介入」→「医師・患者との連携」 の3つ。
✅ eGFRの推移とタンパク尿の有無を定期的にチェックし、腎機能の低下スピードを把握する。
✅ SGLT2阻害薬・MRA・適切な血圧管理を行うことで、腎機能を維持する。
✅ 必要に応じて腎専門医へつなぐことで、透析を回避するチャンスを広げる。
薬剤師として、腎機能を守るためにできることは多くあります。
日々の業務の中で、腎機能低下のサインをいち早く察知し、適切な介入につなげることが、患者の未来を大きく変えることにつながります。
これで薬局薬剤師腎機能の対応編は終了となります。この内容をまとめて
電子書籍を作成していきます。その電子書籍の中では、患者対応を追加し、より実践的な内容にしていきたいと思います。お楽しみに!
参考書籍
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著者:長澤 将
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著者: 長澤将
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4. エビデンスに基づく CKD診療ガイドライン2023
編集: 日本腎臓学会
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