こんにちは!薬局薬剤師のウーチーです!
前回の第38弾では、抗血小板薬と抗凝固薬の違いや使い分けについてお話ししました。今回はその続きとして、「出血」という副作用に焦点を当て、薬剤師としての具体的な対応をまとめていきます。
出血は“薬理作用の延長線上”にある副作用
抗血小板薬や抗凝固薬は、血栓予防を目的として使用されますが、その作用により「止血力」が低下し、出血リスクが高まります。これは薬の狙った効果と表裏一体の副作用であり、使用者全員が一定の出血リスクを背負うことになります。
薬剤師はこの延長線上の副作用に敏感でなければなりません。出血が起こる前から、予測・説明・観察の3点を意識することが、安心・安全な服薬支援に直結します。
出血=すべて危険? 正しい見極めがカギ
患者さんからよくある相談に、
- 「鼻血が出ましたが、薬のせい?」
- 「歯茎から血が出て心配です」
といったものがあります。
問題のない軽微な出血
- 軽度の鼻血
- 皮下出血(いわゆる青あざ)
- 歯磨き時の歯ぐき出血
これらは薬理作用による生理的変化ともいえ、多くは経過観察で問題ありません。
生活指導のコツ
- 鼻はやさしくかむ
- T字カミソリではなく電動シェーバーを使う
- 歯ブラシは毛先の柔らかいものを選ぶ
こうした予防策を伝えることで、患者さんの安心感が増し、余計な中止を避けられます。
注意が必要な出血:この4つは即受診!
以下のような出血が見られた場合は、薬の影響に限らず重大な疾患の可能性があるため、必ず医師へ相談するよう指導しましょう。
- 血尿:尿がピンク色〜真っ赤に変化 → 尿路や腎臓からの出血リスクあり
- 血便・黒色便:鮮血が混じる、タール状の便 → 消化管潰瘍や憩室出血など
- 大量の持続的な鼻出血、止まりにくい歯茎出血 → 血小板機能異常の可能性
- 脳出血の兆候:頭をぶつけた後にろれつ障害、片麻痺、意識障害、嘔吐など → 即受診を
“FAST”で見逃さない!脳卒中の早期発見
脳出血や脳梗塞を素早く見つけるために、「FAST」または「BEFAST」の指標が有効です。
- F(Face):顔の片側が歪んでいないか
- A(Arms):両腕を持ち上げられるか
- S(Speech):言葉がはっきりしているか
- T(Time):どれか1つでも異常があれば救急受診
近年は B(Balance)(バランスの喪失)と E(Eyes)(視覚異常)を加えた「BEFAST」も有用とされています。
👉 Think FAST キャンペーン公式 では、抗血栓薬服用中の転倒や頭部外傷の危険性をわかりやすく解説しています。
Talk and Deteriorate(T&D):高齢者頭部外傷の注意点
**Talk and Deteriorate(T&D)**とは、頭部外傷後に一時的に会話が可能でも、その後急速に意識障害が進行する病態です。
特に高齢者や抗血栓薬を服用している患者に多く、次のようなリスク因子があります:
- 高齢
- 抗血栓薬の服用
- 凝固線溶系異常(例:Dダイマー高値)
▶ 慎重な経過観察と異変時の迅速な受診が重要です。
頭をぶつけた後にろれつ障害、片麻痺、意識障害、嘔吐 ふらつき等、何かいつもと体調が
違っていれば、受診をお伝えしましょう。
出血の頻度とリスクを数値で知る
- DOAC使用者の大出血リスク:年間2.1~3.6%
- 頭蓋内出血:0.23~0.49%/年
- 消化管出血:0.76~3.2%/年
重篤な出血は頻度としてはそれほど高くありませんが、見逃しが命に直結します。
患者への伝え方:「安心+警戒」のバランス
不安をあおりすぎず、かといって軽視もせず「冷静な判断」が促せる説明が理想です。
伝え方の例
「このお薬は血栓を防ぐ働きがある反面、出血しやすくなることがあります。青あざや鼻血が少し出るのは大丈夫ですが、便や尿に血が混じったり、頭をぶつけてふらつきがある場合はすぐに病院へ行ってくださいね。」
出血と薬剤禁忌の関係
以下のような状況では、抗血小板薬や抗凝固薬の使用は禁忌または慎重投与とされています:
- 活動性出血
- 未治療の消化管潰瘍
- 頭蓋内出血の既往
📌 添付文書・インタビューフォームの確認が必須です。
『薬局における疾患別対応マニュアル』に基づく脳梗塞対応
厚生労働省『薬局における疾患別対応マニュアル』(2021年3月)では、脳卒中(特に脳梗塞)の再発率が以下のように報告されています:
- 発症1年後:約10%
- 発症5年後:約35%
- 発症10年後:約50%
再発予防のためのポイント
- 禁煙、節酒、減塩、適正体重
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理
- 脱水の回避(こまめな水分摂取)
薬局薬剤師は、服薬状況・生活習慣の把握と医師連携によって、こうした予防支援に積極的に関わることが期待されています。
📖 参考:
厚生労働省. 『薬局における疾患別対応マニュアル』2021年3月
https://www.mhlw.go.jp/content/001409754.pdf
まとめ:薬剤師が出血対応の要に
抗血小板薬・抗凝固薬による出血は、「予防」「観察」「受診基準」の3つを軸に対応すべき副作用です。
薬局薬剤師が行える実践例
- ✅ 生活指導(電動シェーバー、やわらか歯ブラシ)
- ✅ 出血症状の観察と重症度判断
- ✅ 医師への相談タイミングの提示
- ✅ 禁忌・注意薬の確認
- ✅ 脳卒中再発予防の啓発支援
Think FAST や Talk and Deteriorate など最新知識を活用し、患者さんの安心と安全を守っていきましょう!
📚 参考文献一覧
- 厚生労働省. 薬局における疾患別対応マニュアル. 2021年3月.
https://www.mhlw.go.jp/content/001409754.pdf - THINK FASTキャンペーン啓発フライヤー(日本脳神経外傷学会)
http://www.neurotraumatology.jp/information2/filedata/Think%20FAST_Flyer.pdf - THINK FASTキャンペーン(ベーリンガーインゲルハイム)
Think FAST キャンペーン公式 - 高齢者頭部外傷におけるT&Dのリスク因子と予後(Neurosurg Emerg 25: 187-194, 2020)
http://jsne.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20210215153459-9A6D7A1F36BE9CD438F6477360A43F4001C2C5A400A61724456F07D2F8DD53B1.pdf
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